ねぇ。
好きな人に気を遣うようになったこと、ない?
前はそんなことなかったはずなんだ。
会いたい時は、
会いたいって言えていた。
寂しい時は、
寂しいって言えていた。
返事の内容なんて気にせずに、
思ったことを送れていた。
でも、
いつからだろう。
好きなのに、
少しずつ言葉を選ぶようになった。
23時48分
今でも覚えている。
23時48分。
ベッドに寝転びながら、
スマホを見ていた。
「会いたい」
打った。
消した。
もう一度打った。
また消した。
送ったら困るかな。
疲れてるかな。
重いかな。
そんなことばかり考えていた。
前は考えなかったのに。
結局、
送ったのはスタンプ一つだった。
スマホを伏せて、
天井を見た。
会いたかっただけなのにな。
その時、
少しだけ泣きたくなった。
デートの帰り道
楽しくなかったわけじゃない。
ちゃんと笑っていた。
ご飯も食べた。
話もした。
でも、
駅まで歩く帰り道で思った。
あれ。
今日、
何を話したっけ。
思い出そうとしても出てこなかった。
会えたのに。
楽しみにしていたのに。
なぜか心だけ満たされなかった。
その理由を、
私はまだ知らなかった。
本音より先に
いつからか、
本音より先に相手の顔色を見るようになった。
この話、
興味あるかな。
今は話しかけない方がいいかな。
疲れてるかな。
機嫌悪いかな。
前はそんなこと考えなかった。
好きな人の前では、
もっと自由だった。
もっと自然だった。
もっと自分だった。
電車の窓
帰りの電車。
窓に映る自分を見ながら、
ふと思った。
私、
こんなに気を遣う人だったっけ。
もっと素直だったよね。
会いたいって言えていたよね。
寂しいって言えていたよね。
大丈夫じゃない時は、
大丈夫じゃないって言えていたよね。
その瞬間、
胸がぎゅっとなった。
恋が変わったことより、
自分が変わってしまったことの方が悲しかった。
本当は怖かった
気を遣っていたんじゃない。
本当は怖かった。
嫌われるのが。
面倒だと思われるのが。
離れていかれるのが。
だから、
言いたいことを飲み込んだ。
聞きたいことを聞かなかった。
寂しいも。
会いたいも。
全部、
大丈夫の中に隠した。
でもね。
隠した気持ちは、
なくならない。
ただ、
行き場を失うだけなんだ。
今なら分かる
今なら少し分かる。
私が寂しかったのは、
会えなかったからじゃない。
連絡が減ったからでもない。
好きな人の前で、
素の自分でいられなくなったからだ。
恋って本当は、
安心できる場所だったはずだ。
頑張って好かれ続ける場所じゃない。
評価されないように気を張る場所でもない。
会いたいって言える場所だった。
寂しいって言える場所だった。
弱い自分を見せても、
大丈夫だと思える場所だった。
まとめ
気を遣う恋になった時、
私は少しずつ自分を隠すようになった。
その方が続く気がしたから。
その方が嫌われない気がしたから。
でも、
今なら思う。
一番寂しかったのは、
相手が変わったことじゃない。
好きな人の前で、
自分らしくいられなくなったことだった。
たぶん恋が終わり始めるのは、
好きが減った日じゃない。
本音を飲み込むことに慣れてしまった日からなんだと思う。
そしてあの日の私は、
あなたを失うことよりも、
自分を隠し続けることに疲れていたのかもしれない。
会いたいって言えなくなった。
寂しいって言えなくなった。
本音より先に、
相手の顔色を見るようになった。
その頃の私は、
恋をしていたというより、
恋を失わないように頑張っていたのかもしれない。
でも、
気を遣うことに慣れてしまった頃から、
別の寂しさも始まっていた。
会えているのに満たされない。
隣にいるのに遠く感じる。
そんな夜についてはこちら。


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